宝塚星組『アレクサンダー』は、紀元前4世紀のマケドニア王国を舞台に、若き英雄アレクサンダー大王の波乱に満ちた生涯を描く歴史ロマンである。2025年7月6日から8月10日まで宝塚大劇場で上演されたのち、同年8月31日から9月29日まで東京宝塚劇場で再演される予定となっている。本公演で主演を務めるのは礼真琴であり、相手役には舞空瞳が出演している。礼真琴にとっては本作がトップスターとして集大成となる舞台であり、彼女の退団公演でもある点に大きな注目が集まっている。『アレクサンダー』の脚本・演出を手がけるのは生田大和で、過去にも『ロミオとジュリエット』や『THE SCARLET PIMPERNEL』など宝塚らしい華やかな世界観と深みある人間描写を両立させてきた演出家である。物語は、アレクサンダーが父フィリッポス2世の死を経て王位を継承し、ギリシア統一、アジア遠征へと駆け上がる過程を中心に展開される。彼のカリスマ性、仲間たちとの絆、愛と野望のはざまで揺れる内面が丁寧に描かれており、史実に基づきながらも宝塚ならではの美と抒情性が随所にちりばめられている。礼真琴はアレクサンダーの若さと孤独、理想に燃える指導者像を体現し、長年培ってきた歌唱力と表現力を余すところなく発揮している。舞空瞳が演じるロクサネ役は、アレクサンダーの内面に寄り添う存在として、強さとやさしさを兼ね備えた演技が光っている。また、専科から特別出演となる凪七瑠海がフィリッポス2世役で出演し、王としての重厚さと父親としての苦悩を繊細に演じている点も見逃せない。本作は宝塚歌劇団星組にとって2025年の大きな節目となる作品であり、長く記憶に残る舞台となることは間違いないであろう。
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