大貫妙子は、日本の音楽シーンにおいて独自の美意識と世界観を築き上げた女性シンガーソングライターである。本名は大貫妙子で、1973年にシュガー・ベイブのメンバーとして活動を開始し、その後ソロへ転向。シュガー・ベイブは山下達郎らと共に結成された伝説的バンドで、唯一のアルバム『SONGS』は日本のポップミュージックの歴史において重要な作品として語り継がれている。1976年にアルバム『Grey Skies』でソロデビューを果たし、透明感と温もりが共存するヴォーカルと、洗練されたアレンジによって注目を集めた。彼女の音楽は、AORやシティポップの範疇で語られることが多いが、ジャズやクラシック、ブラジル音楽などの要素を取り入れた多層的なサウンドが特徴である。80年代には坂本龍一と共に制作した『Aventure』『Cliché』などが高い評価を受け、特に1983年の『SIGNIFIE』は、彼女の音楽的成熟を示す代表作とされている。また、映画『Shall we ダンス？』の主題歌「Tango」は、その叙情的な旋律と情感に富んだ歌声で広く知られている。さらに、スタジオジブリ作品『耳をすませば』の挿入歌「カントリー・ロード」の日本語訳詞と歌唱を担当するなど、その活動は映像作品とも深く関わってきた。長年にわたって安定した創作活動を続ける一方で、ライブパフォーマンスにも定評があり、聴衆を深い音楽世界へと引き込む力を持つ。近年ではシティポップ再評価の文脈でもその存在感が再認識され、若い世代からも支持を集めている。自身のレーベル「mountain mountain」を立ち上げて以降は、より自由な音楽制作を展開し続けており、その作品群はジャンルを超えた普遍性を持つ芸術として評価されている。
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