桂文枝は、日本の伝統話芸である上方落語の代表的存在として長きにわたり活動を続けてきた人物である。本名は河村静也。五代目桂文枝の名跡を襲名したのは2006年で、それまでは桂三枝として広く知られていた。初代の桂三枝として1966年にデビューして以来、落語家としてだけでなく、テレビ番組の司会やタレント活動など多岐にわたるメディア出演で国民的な知名度を獲得した。とりわけ1970年代から1990年代にかけてのテレビバラエティ番組における存在感は大きく、『新婚さんいらっしゃい！』の司会として45年以上にわたって続投した功績はギネス記録にも認定されている。落語の世界では、従来の古典落語にとどまらず「創作落語」の分野を切り開き、500作以上もの新作を手がけた点で特筆に値する。これは笑いに対する飽くなき探究心と、時代に即した話芸の在り方を模索し続けた結果であり、多くの後進に影響を与えている。襲名以降は「六代目桂文枝」として格式を重んじる一方で、上方落語協会会長や吉本興業の重鎮として後進の育成にも尽力した。創作落語のジャンルでは「読書の時間」「ゴルフ夜明け前」などが有名で、聴衆の身近な日常を巧みに切り取りながら、人情とユーモアを交差させた語り口が魅力とされている。落語界での功績により、紫綬褒章や旭日小綬章なども受章しており、文化人としての評価も高い。桂文枝は、伝統と革新を兼ね備えた稀有な落語家であり、現代の上方話芸を語るうえで欠かすことのできない存在である。
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