市川高麗蔵は、歌舞伎界において重厚な芸と確かな演技力で知られる実力派の役者である。七代目市川高麗蔵として活動しており、屋号は高嶋屋、定紋は鷹の羽である。現在の市川高麗蔵は本名を市川道太郎といい、1964年に六代目市川高麗蔵の養子となり、歌舞伎の世界に足を踏み入れた。初舞台は1965年、新橋演舞場における「仮名手本忠臣蔵」大序の鷹匠役であり、以来、長年にわたり歌舞伎座、新橋演舞場、国立劇場など数々の舞台で活躍を続けている。七代目を襲名したのは1981年のことであり、このときは新橋演舞場で襲名披露公演がおこなわれ、話題を集めた。特に時代物の敵役や渋い中年男性の役どころを得意とし、正統派の立役として高い評価を得ている。また、古典の継承に力を注ぎ、舞踊の分野にも明るく、優雅で品格ある所作には定評がある。歌舞伎の枠を越えたテレビドラマや映画への出演もあり、一般層への認知度も高まっている。2014年には文化庁芸術祭賞の演劇部門で優秀賞を受賞するなど、その演技は高く評価されている。2020年には重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝に認定され、その芸が国の宝として公に認められるに至った。伝統を守りつつも常に時代に寄り添い、多くの後進の指導にも尽力しており、歌舞伎界の精神的支柱としての存在感を放っている。
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