中村米吉は、歌舞伎界において次代を担う若手俳優のひとりとして注目されている人物である。本名は中村吉之丞（なかむらきちのじょう）で、1993年3月8日に誕生し、名門・中村歌六の長男として伝統芸能の世界に身を投じた。屋号は播磨屋で、所属は重要無形文化財総合指定を受ける歌舞伎俳優の一門に属している。2000年、わずか7歳で『義経千本桜』の安徳帝役として初舞台を踏み、以降、女方としての高い表現力と気品ある所作で徐々に評価を高めていった。女方に専念するようになったのは2006年頃からで、以降はしなやかで情感豊かな舞台姿が話題となることが多く、特に美貌と細やかな演技が若年層のファン層にも支持を広げている。代表作には『京鹿子娘道成寺』や『吉野山』、『桜姫東文章』などがあり、いずれも古典の名作に新たな息吹を吹き込むような演技で高く評価されている。また、近年はテレビドラマやトーク番組にも出演するなど、伝統芸能の枠を超えた活動も見せているが、常に軸は歌舞伎の舞台に置いている。2020年には国立劇場の公演で初めて大役を任され、その完成度の高さが専門家からも絶賛された。若き日から芸に対する誠実な姿勢を崩さず、古典を重んじながらも柔軟な発想で現代の観客に響く演技を模索してきた姿勢が、歌舞伎の将来に新たな希望をもたらしている存在である。
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