舞台『フェードラ 炎の中で』は、2024年12月に上演された現代的な解釈を加えたギリシャ悲劇の舞台作品である。東京芸術劇場プレイハウスにて開幕し、千秋楽は同年12月24日に同会場で迎えられた。主演を務めたのは実力派女優・寺島しのぶであり、彼女の存在感と狂おしい情念の表現力が話題を呼んだ。また共演には矢崎広、門脇麦、千葉哲也らが名を連ね、舞台全体に重厚な人間ドラマを展開させた。原作は古代ギリシャの詩人エウリピデスによる悲劇『ヒッポリュトス』に着想を得たジャン・ラシーヌの戯曲『フェードル』であり、それをフランスの現代演出家クリストフ・ルブランが大胆に再構成した演出となっている。ルブランは本作において、古典の悲劇性を現代の観客にも通じる人間の業や欲望、倫理の崩壊として浮き彫りにし、舞台美術や照明、音響を駆使して重厚で幻想的な世界観を構築した。特に炎のモチーフを随所に織り込み、主人公フェードラの情熱と破滅の象徴として用いた演出は高く評価された。原作のラシーヌ版『フェードル』は17世紀フランス古典悲劇の傑作とされ、文学的にも演劇的にも多くの再演や研究対象となってきたが、今回の舞台はそこに現代的な問題意識を重ね合わせ、観客にとってもリアルで切実な物語として再提示している。また衣装はモダンとクラシックを融合させたスタイルで、視覚的にも強いインパクトを残した。寺島しのぶの演技に対しては特に批評家から絶賛の声が相次ぎ、舞台全体の完成度と共に2024年末の演劇シーンにおける重要な作品として記憶されることとなった。
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